成金と自由人と愉快な仲間達

仮面をつけたその人に握っているそれを突き立てる。
肉に刃物を食いこませる感覚。
生ぬるい液体が手を濡らす。
怯えたように棚の後から見上げる小さな視線。

気付けば一人ぼっちでその場所に膝を抱えて座っていた。
きっと俺はあの親子が好きだったんだ。
こんなどうしようもないろくでなしを面倒見てくれたあの人達が好きだった。
今さらになってそんなことに気付く。

俺がいなければこの家族は壊れたりなんてしなかったかもしれない。
そう考え始めると止まらなくて、やっぱり自分はどうしようもなく駄目な奴だと思えてくる。

それからずっと、その場所から進むことができなかった。

そんな遠い昔の夢。